ごあいさつ

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近年,わが国においては,ノロウイルスによる食中毒が頻発するなど,食中毒の疫学調査は以前よりも難しさを増しております。また,1996年に堺市の学校給食を原因とする腸管出血性大腸菌による大規模食中毒が発生して以来,当該菌種による食中毒は全国で散発し,2011年にはユッケによって3名が死亡して大きな社会問題になりました。それは,食品衛生法の生食用食肉の基準の改正へと及び,生食用牛肉の調理に対する指導の徹底が食品衛生監視員の重要な業務の一つとなりました。 海外でも,2011年に下痢原性大腸菌によってドイツを中心に3,800名以上が発症し,50名以上が死亡するという食中毒が発生し,ヨーロッパの人々は大きな衝撃を受けました。 これによってもたらされた社会不安は,わが国でもいつでも起こり得る状況にあります。 また,近年,食品の流通形態は複雑かつ広域化し,輸入食品の増加やセントラルキッチンのような大規模調理施設の普及など,その変化は多様化しております。 このような食品衛生を取り巻く状況の変化に対応した食品衛生行政が求められております。本書は,食品衛生監視員の食中毒事件処理の支援を目的とするもので,食中毒事件から得られた教訓や食品衛生監視員の経験を随所に生かすように努め,現場に即応した内容で構成しました。本書には,多数の食中毒事例が掲載されているという特徴があり,書籍タイトルにはその意味が込められております。また,食中毒事件処理に必要な病因物質に関する知見を,多くの専門書や文献から選択・抽出して,一括して掲載されているのも本書の大きな特徴となっております。 また,購入者がダウンロードできる電子版には,病因物質ごとに分類された食中毒事件集および食品衛生の歴史などもまとめられております。 本書が,保健所の食品衛生業務を支援し,食中毒の防止に資するための一冊となるように祈念しております。 発刊に当たって,販売元を引き受けて便宜を図っていただいた公益社団法人日本食品衛生協会,また,多忙な業務の中,執筆していただいた国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室長の登田美桜先生と同衛生微生物部第三室長の渡辺麻衣子先生,ご指導をいただいた山口大学共同獣医学部獣医学科病態制御学講座教授の豊福肇先生,国立感染症研究所の寄生動物部第二室長の山﨑浩先生,国立医薬品食品衛生研究所の食品衛生管理部第四室室長の野田衛先生,同第二室室長の大城直雅先生並びに女子栄養大学食品衛生学研究室教授の斉藤守弘先生,著作権などについてのアドバイスをいただいた犬飼健郎弁護士,表紙のデザインをしていただいた武蔵野美術大学通信教育課程元教授の小野皓一氏など,本書発刊の趣旨に賛同され,ご協力していただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
           2017年 春
                                            「行政と食中毒」改訂版制作委員会 会 員 一 同